大正式散歩。『古本とジャズ』植草甚一

角川発刊の『ランティエ叢書』というアンソロジー本のシリーズの中の、植草甚一。 自分の散歩は「大正式散歩」だと語っているところがよかった。 自分は大正生まれの人間だから、ゆっくり歩く。永井荷風など明治の人間は「明治式散歩」で、もっと遅かったは…

【本】『フィッシュ・オン』開高健

開高健が世界中をめぐって魚釣りをする。 「人間の不幸は部屋のなかにじっとしていられないことから来る」というパスカルの言葉を開高健はしばしば引用する。原因の見えない焦燥が、小説家を旅へと連れ出す。 ...私は毎日、窓ぎわでウイスキーを飲みつつ、ス…

【映画】『シング・ストリート』『はじまりのうた』ジョン・カーニー

完全にジョンカーニー監督のファンになってしまった。これまで、好きな映画監督と言える人はあんまりいなかったけど、この人は、今後の作品も追い続けようと思えるような監督だ。「信頼できる」映画監督だ。 『シング・ストリート』は飯田橋のギンレイホール…

【本】『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック

旅ができないから旅の本を読む。 1960年のアメリカを、58歳のスタインベックと愛犬のチャーリーが、キャンピングカーで旅をする。 このチャーリーとの旅について、「自分の国の真実を探して旅に出て、答えを見つけた」と語ることができたらどんなに気持ちが…

【本】『働くことがイヤな人のための本』中島義道

この本の何よりもいいところは、斎藤美奈子の解説を載せているところだ。中島義道の思想にまったく共感しない、共感したくもない立場としての解説だ。それを載せてくれているところが素晴らしい。読み進めていくうちに、中島義道節にどんどん引き込まれてい…

【本】『極北に駆ける』植村直己

小岩の古本屋に入って、なんだかいい古本屋だったので、記念に何か一冊買っていこうと思って手に取った。100円。 たまにこういう本を読むべきだと思った。驚き、興奮より先に、癒される思いがした。北極の極限的な自然と格闘する植村さん。そこにあるのは間…

【本】『珠玉』開高健

宝石を題材にした開高健の小説。 ...交通事故があったらしく、二台の自動車が大破したままでからみあっている。ガラスの細片が水晶の粉のように散乱し、血が何滴か光っている。発生してからちょっと時間がたったところらしくて、車体、タイヤ、ガラス屑など…

【本】 『夜と陽炎 耳の物語❇︎❇︎』開高健

ごぞんじ開高先生の自伝本。上下二巻のうちの下巻。 やはり開高健にとって、ベトナム戦争は決定的な転機だったんだ。 開高健の目線は、ずっと自身の内面に向けられてきた。自身を凝視してしまうことによる病。それが、ベトナム戦争への従軍によって、外側へ…

【本】『人生逃亡者の記録』きだみのる

開高健センセイが名文家として尊敬していたという。 「いい文章を書く秘訣は?」という質問に「セックスを横向きですること」と答えたというエピソードからして、タダモノじゃない。 きだみのるの文章にぶつかってみた。 1895年生まれ1975年没。 幼少期は鹿…

【本】『猫楠ー南方熊楠の生涯』水木しげる

引越す部屋の片付けをしている。 本を処分しようと思って仕分けをするが、これがなかな難しい。 まだ読んでいない本は、基本的に持って行く。 一度読んだ本の場合は、手元に置いておきたいというものは持って行き、それ以外は処分する。 しかしこの、「手元…

【映画】『この世界の片隅に』

今年は今までにないくらいたくさん映画を観に行っている。 新作映画は、園子温の『ひそひそ星』からはじまり、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』、『ハドソン川の奇跡』。 あとは名画座で、『団地』(阪本順治)と『海よりもまだ深く』(是枝裕和)の二本立…

窓をあけといてほしい

ブログ。 こんな、発信すべき情報をなにひとつ持ち合わせていない人間が、なぜブログなんてものを始めるんだ。 これはもう完全に、自分のためである。 ものを書くことによる発見、発展、拡大、拡張、記憶、記録、反省、反復、そしてなにより、自分自身への癒…